日本のメッセージングアプリLINEを提供するLINE株式会社は、2016年にIPOを申請しました。このIPOは、史上最大規模ではないにせよ、世界中で非常に待ち望まれていたものです。LINEは過去に何度も上場を噂されながら、爆発的な成長を見せながらグローバルな成功へと突き進んできました。
LINEはこの3年間、非ゲームの世界収益パブリッシャーランキングで首位を保っています。メッセージングアプリやソーシャルメディアアプリの他のパブリッシャーがいずれもトップ10にランクインしていないことを考えると、このアプリがストアでのマネタイズに成功していることは特に注目に値します。
LINEは2013年以来、世界パブリッシャーランキングで首位を保っています。
LINEは2011年の大震災後にリリースされ、メッセージングサービスとしてまずその名が知られるようになりましたが、最近では、あらゆる機能を備えた本格的なプラットフォームへと進化しています。しかし、LINEにこれほどの成功をもたらしているプラットフォームとは、どういうものなのでしょうか?
グローバルで成長をさらに加速
メッセージングアプリの世界での鍵は「ネットワーク効果」です。コミュニケーションサービスやソーシャルメディアサービスでは、既存ユーザーのネットワークに新規ユーザーを加えるペースが速いサービスほど、成功の規模は大きくなり、より支配的な地位を確立できます。
LINEのチームは当初、さまざまなタイプのソーシャルネットワークを検討していました。たとえば、Instagram風の写真共有アプリや、WhatsApp Messengerに似たメッセージングサービスなどです。しかし2011年3月、大震災に襲われました。日本の通信インフラは混乱し、LINEで働くエンジニアはお互いに連絡が取れませんでした。これをきっかけに、彼らは写真アプリを断念してメッセージングアプリにのみ注力することにし、国内競争がない状態がうまく作用しました。数カ月後の2011年夏、彼らはメッセージングアプリをリリースしました。
LINEの成長ペースは、WhatsAppやViberのような他のメッセージングアプリと比べても際立っています。リリースから2年も経たないうちに、LINEは1億以上のユーザーを獲得しました。同社は最近、プレス向けイベント「LINE CONFERENCE TOKYO 2016」を開催し、世界のユーザー数が10億人を上回り、月間アクティブユーザー数(MAU)2億1500万人を超えたことを発表しました。
成長への鍵となっているのは、アプリがリリース間もない時期であっても海外のユーザーを獲得できるLINEの能力です。インドネシア、台湾、それにタイで非常に高い人気を得ているだけでなく、LINEはこれまでに、70カ国のiOS App Storeと16カ国のGoogle Playでダウンロードランキングの首位に立ちました。
LINEはインドネシア、台湾、タイで、Google Playの「通信」カテゴリーの首位に立ち、今もトップ5にとどまっています。
LINEがグローバルな拡大に成功したのは、その巧みなユーザー獲得戦略によるものでしょう。LINEは、各市場に合わせて戦略を変えています。たとえばアプリ内で利用されるスタンプを、それぞれの国や文化に合わせてローカライズしているほか、トークの非表示機能など、このプラットフォーム上で利用できる他の周辺サービスもローカライズしています。
LINEがプラットフォームへの移行に成功した理由
欧米のパブリッシャーが手がけるFacebook Messengerなどのアプリは、本格的なアプリプラットフォームへと移行している最中ですが、LINEのようなアジアのメッセージングアプリの間では以前からそうでした。
LINEは主力のメッセージングアプリで相当な規模のユーザー基盤を確立したあとも、その成功に甘んじることはありませんでした。同社は、このアドバンテージを活かしてさまざまな関連アプリをリリース。これにより、LINEは安定した収益増を実現しています。日本の収益ランキングのトップアプリを見ると、LINEがさまざまな製品を提供していることがわかります。
2016年5月には、LINEの4種類のアプリが日本の収益ランキングトップ10に入りました。
漫画アプリや音楽ストリーミングアプリとの連携
LINEのプラットフォームが注目される理由は、同社が既存のユーザー基盤を活用し、自社サービスどうしの連携を目に見える形で強化していることです。アプリのクロスプロモーションやログイン情報の統一といった基本的でシンプルな連携から、さらに深い連携へと進めることで、メッセージングアプリのユーザーをすべての製品ポートフォリオに簡単に取り込めるようになったのです。
非ゲーム系アプリで最も高い収益を上げているLINEマンガを見てみましょう。このアプリでは、オンライン漫画を読むことができますが、一部の作品では、登場するキャラクターの特製スタンプが販売されています。このスタンプをダウンロードすれば、LINEのメッセージングアプリで使うことが出来ます。スタンプを受けとった人がこのスタンプをクリックすると、LINEマンガが起動したり、ダウンロードを促すメッセージが表示されたりするという仕組みです。
LINEの連携が成功したもう1つの例は、音楽ストリーミングアプリのLINE MUSICです。2016年に登場した新機能により、LINEのユーザーは自分のプロフィールページにお気に入りの楽曲をBGMとして設定できるようになりました。これはLINE MUSICとの連携によって実現した機能で、LINEにこの機能が追加されたあと、LINE MUSICはダウンロード数ランキングが急上昇しました。
LINE MUSICは、LINEのプロフィールページとの連携機能が登場した直後に、ダウンロード数ランキングが急上昇しました。
優れたローカライズ戦略
他のプラットフォームアプリでは、既存のサービスを単純に翻訳して国外の市場でリリースするのが一般的です。これに対してLINEは、特定の地域に特化したアプリを開発するというユニークな戦略を展開しています。
たとえば、同社が最近リリースしたアプリFoodie(フーディー)は、食べ物の撮影に特化したカメラアプリで、食事の風景を写真に収めるというアジアで流行りのスタイルにうまく対応したものです。その結果、このアプリは韓国、台湾、タイで成功を収めています。
そのほかにも、LINEは東南アジアで、緊密な同窓生ネットワークを活かした機能(LINE Alumni)をリリースしました。その際、LINEはスマッシュヒット映画『Ada Apa Dengan Cinta』と提携し、YouTubeでコラボ動画を展開しました。動画の内容は、映画の主な登場人物たちが10年後に、LINE Alumniを使って再会するというものです。この動画は600万以上回視聴され、LINEの人気がインドネシアで急上昇するのに貢献しました。
LINEは、600万以上回視聴されたミニドラマ『Ada Apa Dengan Cinta』に登場しました。
知的財産(IP)の利用
LINEがプラットフォームとして成功した理由としては、キャラクターIPの活用も挙げられます。LINEのスタンプで使われているキャラクターは、アジアで絵文字に代わるものとして広く人気を得ています。このキャラクター人気を活用して、LINEはパズルゲームのLINE Popや、台湾とタイで特に人気が高いタワー防衛ゲームのLINE Rangerといったゲームアプリで大きな成功を収めました。
また、日本でキャラクターIPから新しいテレビアニメ番組が生まれているほか、44の公式キャラクター商品を扱う店舗が11カ国でオープンして大盛況となっています。
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韓国のコスメブランドMISSHAと提携して、パッケージにキャラクターを登場させています。
今年最大のIPOになるか
LINEは当初こそ控え目なスタートでしたが、その後世界的なプラットフォームへの転身に成功しました。LINEは、主力のメッセージングアプリと他のサービスをスムーズに連携させるとともに、さまざまな地域に特化したアプリの開発やキャラクターIPの活用といった有効な戦略を実施することで、10億以上のユーザーと2億1500万のMAUを抱えるアプリポートフォリオの構築に成功しました。IPO後にLINEがどのような成果を上げるのか、今後を楽しみに待ちましょう。
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2016 M07 14
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