モバイルはデジタルプロダクトマネージャーの重要な責任範囲です。注視すべき最も重要なモバイル指標は何でしょう?そして、その指標で自社アプリのパフォーマンスをどうやって向上させることができるのでしょう?
モバイルアプリ成功の基礎となる指標
App Annieはこのシリーズの初回記事で、モバイルアプリがデジタルプロダクトマネージャーにとって必要不可欠である理由を示し、デジタルプロダクトマネージャーが確実に成功するために注視すべき基本的な指標を概説しました。平均的なユーザーが1日あたり3時間近くをアプリに費やす状況で、App Annieはアプリ利用時間がアプリ成功の基本通貨であることを発見しています。今回の記事では、分析をさらに深め、アプリ利用時間に関連する追加指標を見ていきます。
このシリーズの第1部では、利用時間は顧客が自社アプリにエンゲージし価値を受け取る度合いの重要な指標であることを説明しました。そして、トレンドを知り競合アプリと比較するために、自社アプリの利用時間を継続的にトラックすることがなぜ重要なのかを示しました。今回は、一歩先に進んで、利用時間の市場シェア推移と、自社アプリが競合アプリと比べて、どのようなパフォーマンスを示しているかを見ていきます。平均的な消費者がスマートフォンに80以上のアプリを持ち、毎月40近いアプリを使っていることを考慮すれば、競争が厳しいことは明白です。だからこそ、アプリ利用時間の市場シェア推移を見ていくことが重要なのです。これはトレンドの変化を知る重要な指標であり、定期的なモニタリングと早期のアクションを行わなければ、自社アプリが苦境に立たされる可能性もあります。
アプリ利用時間の市場シェアは継続的な成功に重要な指標
E社の視点からケーススタディを見ていきましょう。同社は競合アプリを含むアプリ総利用時間の市場シェアを分析しています。下のチャートで、E社が13カ月間市場独占を維持していたことは明らかです。ただし、最終月にE社がアプリ利用総時間の市場シェアを落としたこともを確認できます。前年比で、市場シェアは69%から55%まで14ポイント下がりました。このような変化に気づくために、市場シェアをモニタリングすることが重要なのです。ランキング1位を維持することでは十分ではありません。競合アプリが対抗できないほどに強敵になりすぎる前に、利用時間の市場シェアの推移を大きく削る競合アプリに気づく必要があります。総利用時間はアプリ価値を表し、収益の先行指標なのです。
反対に、D社の市場シェアが2017年7月から2018年7月までに17%上昇しました。こうした推移はまた、これが一回限りのマーケティングキャンペーンからの単独の出来事ではないことをことを示しています。実際D社は、過去6カ月にわたって総利用時間の市場シェアを伸ばしてきました。これは、アプリの新機能や、ユーザー体験またはユーザーインターフェイスの大幅な刷新を示している可能性があります。その競合アプリの勢いを止めるのに手遅れとなる前に、E社のこの劇的な変化の要因を把握するため、さらに深く調査することが重要です。
総利用時間の市場シェアの構成要素を分解する方法
この市場シェアの変化の理由はなんでしょう?以前の記事で紹介した分析をD社とE社にも当てはめて、総利用時間の2つの主な構成要素――アクティブユーザー数とユーザーあたりの平均利用時間――に注目し、トレンドの推移を調査します。
E社の月間アクティブユーザー数(MAU)を見ることで、そのユーザー基盤が実際、時間とともに増加していることを確認できます。このことから、こうしたトレンドはE社のユーザーが完全に競合アプリに移行した結果ではないと結論づけることができます。D社のユーザーあたりの平均利用時間に注目すると、それが短期集中型のマーケティングキャンペーンによる急増ではないという仮説も裏付けることができます。D社が実行した戦略は有意かつ継続的な効果がありました。D社のユーザーあたりの平均利用時間が段階的かつ継続的に伸びていることを考慮すれば、E社は将来の市場における自社のポジションを懸念すべきです。
考慮すべきもう1つの重要な指標が、E社とD社のアプリの重複利用状況――E社のユーザーすなわち顧客のうち、D社のアプリも使っている人の数――であり、その時系列での推移です。
上記のグラフで確認できるように、D社のアプリを使っているE社のユーザーは前年比で6ポイント増加しました。これはD社が何かを提供したことを示しています。具体的には、競争的な価格設定、新機能、新しいプロダクト、地理的な拡大、提供価値や既存機能のコミュニケーションなどによって、ユーザーがD社のアプリに移行するのを促したのです。これは重要であり、こうした市場のシフトの兆候がアプリビジネスの第一線に継続的な影響を与える可能性があります。
アプリ利用時間の市場シェアが低下するという問題に遭遇した場合に、 プロダクトマネージャーが実行できる能動的なアクションを見ていきましょう。
自社アプリが利用時間の市場シェアを落としている時に有効な対策
- プロダクトのアップデートを検討する:競合アプリがプロダクトのアップデートでエンゲージメントを向上させたかどうかを判断し、そうした機能の追加を検討すべきかどうかを評価します。
- (App Annieのタイムライン機能などを使って)アプリリリースノートをさかのぼり、競合アプリに追加された新機能や新プロダクトを調べましょう。リテンション率と評価の変化に注目し、レビューに目を通して、新機能などがユーザーに永続的な効果をもたらしてきたかどうかを判断します。
- 先述の例で示したように、重要指標を競合アプリと比較しましょう。アプリ利用時間、MAU、ユーザーあたりの平均利用時間を評価し、さらにはセッション時間とセッション頻度も吟味します。
- アプリ重複利用を常にトラックし、自社アプリのユーザーが競合アプリを使い続けているか、またその逆についても調査して、競合アプリ群のアプリ重複利用状況に変化があるかどうかを見極めましょう。これは、競合アプリが実装した機能を自社アプリのユーザーが求めていることを示唆している可能性があります。
- コアユーザーの再エンゲージ:有効なインセンティブを用意し、自社アプリに対するユーザーのエンゲージ頻度を高めましょう。
- 自社アプリの起動率の低下を認識したら、(プッシュ通知などを使って)再エンゲージメントのキャンペーンを実施し、コアユーザーが自社アプリを使い続けるようなインセンティブを提供します。
- 紹介キャンペーンを展開し、コアユーザーの友人による利用を促進しましょう。
- アプリ限定の特価、サービス、ユーザーにリワードを提供するキャンペーン(例えば一定の頻度でログインすることに対するリワード)を検討し、自社アプリと競合アプリの両方を使っているユーザーに対し、自社アプリを優先するよう働きかけましょう。
- UAマネージャーと協力してマーケティングキャンペーンを調査する:競合アプリのマーケティングキャンペーンが全体的なアプリエンゲージメントに与えたインパクトを評価します「ペイド&オーガニックダウンロード数」 を調べ、そうしたマーケティングキャンペーンの有効性を判断しましょう。
- 競合アプリがダウンロード促進のために最近実施した広告キャンペーンを調べましょう。主要な提供価値のメッセージ、クリエイティブ、ASO戦略、彼らが優先的に出稿している広告プラットフォームでの相対的なシェアが、堅調なダウンロードをどのように促進しているのかを分析します。
- これは、競合アプリのダウンロード増が、短期集中型のマーケティングキャンペーンによるものなのか、あるいは戦略のシフトによって継続的にもたらされるものなのかを判断するのに役立つでしょう。
App Annieがアプリ市場のパートナーとして信頼される理由
業界で最も正確で、信頼性が高く、包括的なApp Annieのアプリ市場データは、100万を超えるユーザーに利用されています。App Annieのデータには、次のような独自の強みがあります。
全体像を把握できる:アプリのパフォーマンスを評価するにあたって重要なのは、個別の指標ではなく、全体像です。ある1つの指標は、必ず別の指標に影響を与えます。マーケティング、機能、ユーザーの反応など、あらゆる要素がアプリの成功に影響を与える可能性があるのです。App Annieは、あらゆるカテゴリーと国にまたがる業界で最も包括的なデータセットを、独自の指標とともに提供しています。また、ダウンロード、収益、リテンション、アプリの重複利用、セッション、起動率、アクティブユーザー数など、さまざまなKPIを利用して、モバイルの全体像を明らかにしています。
確かなデータを入手できる:最終損益に影響を与えるような意思決定を下すには、幅広く、詳細で、かつ正確なエンゲージメント指標が欠かせません。App Annieの製品は、150以上の国にまたがる確かなエンゲージメントデータを提供し、7つの言語をサポートしています。また、100万本を超えるアプリ、大規模な消費者パネル、主要な広告ネットワークなどから収集した匿名データを、データソースとして利用しています。大量のデータポイント、幅広いデータソース、200名を超える研究開発スタッフ、常に進化するデータサイエンスを活用し、他の追随を許さない正確なデータを提供して、お客様の適切な意思決定を支援しています。
自動化され、利用しやすい:App Annieは、時間とリソースの不足に悩むプロダクトマネージャーを支援します。当社のアラートはメールやSlackで送信され、カスタマイズもできるため、アプリや市場のパフォーマンスに重大な変化が起こったことを、誰よりも早く知ることができます。また、iOSとGoogle Playに対応したモバイルアプリを外出先から利用できるため、どのような場所にいても、自社のビジネスに最適なアプリを企画、開発、販売できます。さらに、ウェブ、モバイルアプリ、CSVエクスポートファイル、APIを利用して、アプリのデータやインサイトをまとめて入手できます。
プロダクトマネージャーに役立つ重要指標を紹介する本シリーズの次回記事も、どうぞご期待ください。
2018 M08 29
Mobile App Strategy