新iPhoneはスマホのハードウェアとしての成熟を示しています。より多くのユーザーに充実したアプリ体験を提供できるようになります。
Appleは2010年にiPhone 4を発表して以降、1年おきにiPhoneフラッグシップモデルのデザインをアップデートしてきました。
ところが2016年9月7日、そのパターンは終わりを迎えました。これまでのフラッグシップであったiPhone 6/iPhone 6 Plusのデザインとほぼ同じ、iPhone 7とiPhone 7 Plusを発表したのです。
とはいえAppleは、数多くの改良を実施しています。フォースタッチ対応ホームボタン、CPUおよびGPUの高速化、ストレージ容量の底上げ、カメラとイメージキャプチャのアップグレード、ディスプレイ品質の向上、新色の追加、防水性能などが挙げられます。
そして長らく噂されていた通り、従来のイヤホンジャックをなくしました。新たにバンドルするイヤホンは、ライトニングポートに直結できるというもの。さらにはAirPodsと呼ばれるBluetoothヘッドセットも発表しました。
さらに、iPhone 7 Plusにのみ2つのレンズカメラ(光学2倍ズームと被写界深度エフェクト)を搭載し、iPhone 7との差別化を行っています。
新しいiPhone 7 Plusは、2つのカメラにより、写真に被写界深度エフェクトをかけることができます。(クレジット:The Verge)
今回のアップグレードはある意味、スマートフォンのハードウェアがどれほど成熟したのかを示しています。
ハードウェア自体の改良はくり返し行われている一方で、とりわけ人気が高いモバイルアプリ(例えばPokémon GO、Clash of Clans、Facebook、Snapchatなど)のユーザー体験は、数世代前のデバイスからほとんど変化することはありませんでした。
ここに来て私たちは、多くの消費者と開発者を刺激するようなハードウェアの改良を行えるようになったという意味で、ようやく安定状態に到達したと言えます。
これは業界の進化における自然な段階であり、今後開発者たちはより充実した体験をもたらすアプリを、より広いユーザー層に提供できるようになるでしょう。
この成熟期に対応するため、Appleは中国(およびイギリス)でiPhoneのアップグレードプログラムを拡大しました。App Annieは、これがアップグレードの推進に大きな影響を与えると考えています。
中国は昨年Appleにとって最大のスマートフォン市場となり、iOS App Storeの収益では第2位の市場となっています。
このプログラムはiPhoneの買い替えを検討中の人だけでなく、iPhoneの新規購入者にとっても魅力的なプログラムであることから、重要な販売プロモーションになりえます。特に、通信事業者の販売奨励金が過去2年で縮小されてきた状況ではそうです。
このイベントでは、新しいiPhone以外にも新しいデバイスが発表されています。それは、Apple Watchの2モデルです。
- デュアルコアプロセッサを搭載し、アップグレードされた Apple Watchシリーズ1。
- 処理能力向上、防水性能、GPS内蔵の次世代Apple Watchシリーズ2。今年の刷新のパターンに従い、この新モデルも2015年4月に発売された初代Apple Watchの外部デザインを踏襲しました。
GPS内蔵モデルは、ランナーを対象にしているようです。というのも、ワイヤレス接続されたスマートフォンを持ち歩かずとも、正確なトラッキングが可能となったのです。そして同モデルの防水機能は、スイマーのために開発されたものです。
Appleはまた、ランナーの利用を想定したシリーズ2の共同ブランド版、Apple Watch Nike+も発表しています。
概してAppleは、Apple Watchで特定のニッチ分野をターゲットにしているように見えます。現在がまだ製品ライフサイクルの初期段階であることを考慮すれば、これは興味深い動きと言えるでしょう。
こうした動きは、 Appleがフィットネスに注力する他のウェアラブル製品とこれまで以上に競争することになると同時に、フィットネス愛好家たちをより効果的に狙うのに役立つはずです。
Apple Watch対応アプリはこれまでに2万本近くになったものの、成長ペースは2016年に鈍化しています。
これまでにリリースされたApple Watch対応アプリは2万本近くになったものの、成長ペースは2016年に鈍化しています。
スマートフォンとモバイルアプリが私たちの生活にどれほど重要になったかを考えると、スマートウォッチが独自の価値を見つけることは難しくなっています。スマートウォッチを使うときはスマホも持っていることが多い今、その難しさはなおさらです。
これに対処するため、Appleは市場細分化のアプローチを選んだようです。前述したように、対象を絞った特定の分野(特にフィットネス領域)で拡大し、開発者を呼び込むというものです。
すでに大きな先例があります。Pokemon GOは、Apple Watchに拡張機能を追加するゲームとして、最初にランキングのトップ10に入りました。「歩行」と「ジオロケーション」を強調したことが功を奏しました。このアプローチが今後アプリ開発者によるイノベーションに貢献できるのかどうか、見守っていきましょう。 watchOS 3上でのアプリ起動高速化も肝となります。
概してこのような製品の刷新は、できる限り最良のユーザー体験を提供するために製品ラインを維持するというAppleの意図を示しています。開発者の視点からは、スマートフォン所有者数が増加し、ハードウェア性能が一層似通ってきたことで、多様なカテゴリー(ゲーム、エンターテインメント、ショッピング、交通、バンキングなど)でより多くの消費者に素晴らしいアプリ体験を提供する機会をもたらすことができると言えるでしょう。ウェアラブルの面では、製品改良が特定のニッチ分野、特にフィットネスで開発者に恩恵をもたらすはずです。
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2016 M09 21
Mobile App Strategy