Pokémon GOの勢いは、衰える兆しをほとんど見せません。このアプリは、リリースから3週間過ぎた今でも、iOSとGoogle Playを合わせた日次収益が700万ドルを超えています。このような大成功のおかげで、App Annieには、他アプリの収益や、ユーザーエンゲージメントへの影響に関する質問がお客様から数多く寄せられています。
興味深いことに、Pokémon GOの影響は、アプリ市場全体に広く及んでいるようです。さらに重要なのは、ユーザーエンゲージメントを高めて新たな収益の機会を広げるためのアイディアをPokémon GOがアプリ開発者に提供していることです。
Pokémon GOは他ゲームの収益に影響したのか?
Pokémon GOがリリースされた国や地域では、iOSとGoogle Playの他のゲームに収益上の影響はほとんど見られません米国では、少しの間収益が減少しましたが、すぐにリリース前のレベルに戻りました。
App Annieの『Intelligence』のデータからは、iOSとGoogle PlayでPokémon GOが他のゲームの収益に長期的な影響は見られません。Pokémon GO以外のゲームの日別収益は、米国ではPokémon GOのリリース直後から少しの間下がりましたが、数日で以前の水準に戻っています。ドイツと英国では、日別の収益が下落傾向にありますが、リリース前の傾向から突然下落すような現象は見られません。オーストラリアは、Pokémon GOのリリース後に他のゲームの日別収益がやや増加しましたが、その後は概ねリリース前の状態に戻っています。ポケモンに親しみのある日本でさえ、Pokémon GOが7月22日にリリースされる前の10日間、こうした収益の変動は平均で5%以内に収まっていました。
また、Mobile Strike、Clash of Clans、Candy Crush Sagaといった収益トップのゲームも、日別収益で有意な減少は見られませんでした。全体的に見れば、ゲームの収益の大半は一部のユーザーからもたらされており、こうしたプレイヤーが数多くのゲームに深くエンゲージすることは考えにくいため、今も状況は特に驚くべきものではありません。
Pokémon GOがアプリのエンゲージメントにもたらす影響
Android携帯電話で、Pokémon GOが他のアプリやゲームの平均利用時間に及ぼした影響はごくわずかです。
ご覧のように、Pokémon GOがAndroidフォンで他のゲームやアプリの平均利用時間にもたらした影響はわずかです。FacebookやTinderなど特に利用時間が長いアプリについても同様です。Pokémon GOのゲームをプレイするには外を出歩く必要があるため、消費者は毎日の生活や通勤の合間を縫ってPokémon GOをプレイしているようです。こうした利用パターンにもかかわらず、Pokémon GOのユーザーの平均利用時間と起動率は、米国でAndroid版がリリースされてから1週間、Facebookを上回っていました。このことは、Pokémon GOがこれまで「モバイルが使われていなかった時間」の多くを獲得できた可能性を示しています。
アプリ開発者に新たなチャンスをもたらす拡張現実(AR)
Pokémon GOは、ユーザーの利用時間を他のアプリから奪っているだけでなく、2つの大きな二次的効果をもたらしています。
- Pokémon GOが、仮想のオブジェクトを視覚化して現実の世界に配置するというARのコンセプトを取り入れ、数百万の消費者に広めたことです。
- ゲーム内のルアー(ポケモンをおびき寄せるための課金アイテム)とスポンサード・ロケーションが店舗への集客と支出を効率的に増やしたため、ARの価値に対する企業の理解を促進していることです。
このような二次的効果は開発者に間違いなくチャンスをもたらしています。これまでならアプリが使われていなかった時間帯にユーザーを現実の世界でエンゲージさせ、同時に新しい収益源を生み出せるようになったのです。だからといって、2014年のFlappy Birdのように、Pokémon GOのクローンがアプリストアに大量に出現することを予想しているわけではありません。Pokémon GOを開発したNiantic Labsは、ゲーム内の世界を世界規模に広げるために、GoogleのMapsやPlacesのAPIを使っただけでなく、何年にもわたって収集したデータや、同社初のARゲームIngressをプレイする数百万人のユーザーからのポータル申請を利用しました。これに対し、他のアプリの開発者は、自分たちのアプリ体験に結び付くようなシンプルなARモジュールやAR拡張機能の開発を検討すべきでしょう。
こうしたチャンスは業界に広がっています。たとえば、次のような例が考えられます。
- ゲーム開発者が、特定の小売店舗や地元企業で利用できるゲーム内アイテム(または仮想通貨)を限定的に発行し、客足の増加に応じて対価を受け取る。この仕組みによって、モバイルゲームパブリッシャーは、ユーザー基盤の相当数の人たちから収益を上げ、まったく新しい収益源を作り出すことできます。
- メディア企業が、無料ストリーミングを1カ月楽しめる仮想クーポンを映画館や音楽フェスティバルの会場で発行し、客足を増やす。これによって、メディアストリーミング企業は、自社のアプリのユーザー体験を損なうことなく、新しい広告収益源を作り出すことができます。
- 小売企業が、大型店舗で仮想宝探し大会を実施する。米国のデパートチェーンであるシアーズは、自社アプリで実験的な取り組みをすでに行っています。
このようなARモジュールを導入する場合、Google Mapsオーバーレイのようなシンプルなものを作るか、アプリのユーザーインターフェイスに合わせた複雑なものを作ることができます。言葉を換えれば、シンプルなARを導入すれば、コストが大きな障害になることがほとんどない一方で、リターンを大幅に増やせる可能性があるのです。
今の段階で明らかなのは、Pokémon GOのリリースがARにとって大きな分岐点となったことです。また、その成功は他のモバイルゲームやモバイルアプリを犠牲にしたものではありません。それどころか、O2Oを完成させるモデルを構築することで、アプリ市場全体に新たなエンゲージメントと収益をもたらすチャンスを切り開いているのです。
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注:
- このレポートの収益の数値は、App Annieの『Intelligence』から入手できる推計データに基づいています。
- App Annieの『Intelligence』では現在、iOS App StoreとGoogle Playのデータを入手できます。Amazon Appstoreなど他のアプリストアの推計データは提供していません。iOSとGoogle Playは多くの国のアプリ市場でかなりのシェアを占めていますが、そうではない国も存在します。たとえば、中国には、サードパーティのAndroidアプリストアが多数存在します。
- App Annieの収益推計データは、iOS App StoreとGoogle Playが有料ダウンロードとアプリ内課金から得た収益に基づいています。アプリ内広告から得られた収益は含まれません。
- 収益指標を利用すれば、異なるさまざまな収益額どうしを簡単に比較できます。たとえば、17日目の収益指標が100で、10日目の収益指標が200であれば、10日目の収益額は17日目の収益額
- App Annieの『Usage Intelligence』のスマートフォンとタブレットに関するデータは、実際の多数のユーザーから収集したモバイル利用状況データを、別の独自のデータセットを組み合わせて算出したものです。
- App Annieでは、プライバシーが保護されたハッシュ化済みのデバイスIDを用いて、デバイスレベルの利用状況を追跡しています。データが、集計データの形式以外でサードパーティに提供されることはありません。
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