2018年、小売アプリは利用時間の記録的な数字を達成しました。2019年も、モバイルは成長の促進と実店舗における顧客体験の強化に欠かせない要素です。
3月22日から25日にかけて、小売とイノベーションのさまざまな話題を扱う先進的な会議「Shoptalk 2019」が開催され、数千人もの小売業者、投資家、マーケターらがラスベガスを訪れました。Shoptalkのセッションのタイトルは、「次世代モバイル体験を通じた顧客エンゲージメント」「オムニチャネルとシームレスな物理的およびデジタルの組織」「中国における小売とeコマースの概観」など。2019年において小売業者の関心の中心にモバイルがあるのは明らかです。
それにはもっともな理由があります。App Annieのレポート『モバイル市場年鑑 2019』で、ショッピングアプリの利用時間は2016年から2018年にかけて、世界全体で45%増加して180億時間になり、特に米国では70%も伸びていたことが明らかになりました。同じ期間のモバイルセッション数は、世界全体で65%増加しました。こうした傾向は今後も強まるばかりです。2021年までに、eコマース取引の75%以上がモバイルを介して行われることになるでしょう。App Annieのデータはまた、消費者のアプリ利用時間が伸びるほど、アプリに費やす金額も増えることを示しています(下図参照)。結論は単純で、アプリが具体的な売上の増加を牽引しているのです。
企業はさまざまな方法でモバイルを活用し、成長を牽引しています。店舗の効率性を高め、チェックアウト時間を合理化する。フラッシュセールや特売日を設定する。Burger Kingの場合は、ジオタグを利用してMcDonald’s店舗の近くにいる顧客をエンゲージするキャンペーンを展開。小売業者は考えられるほぼすべての方法で革新し、顧客を獲得して維持しています。
とりわけ有効な手法である、企業主導のフラッシュセールに注目してみましょう。歴史的に、Hallmarkは母の日やバレンタインデーのような祝日にカードの売上を増やして成長を牽引する役割を担ってきました。これを現代に置き換えたのが、Alibabaの「独身の日」や AmazonのPrime Dayのようなイベントで、どちらもモバイルに重点を置き、これらeコマース大手にとっては確かに祝うべき要因となっています。「独身の日」は308億ドルの売上をもたらし、Prime Dayには1億個の商品が購入されました。他の企業も留意し、実践を試みています。航空会社とホテルが感謝祭後の底上げを図って割引を提供する「Travel Day Tuesday」は、2018年に利用客を増やしました。
小売業者が注目すべきもうひとつのトピックは、物理的な店舗とデジタル小売分野の橋渡しです。米国において、AmazonやAlibabaのようなデジタルファーストの小売業者は今もなお、実店舗&オンライン併用型の小売業者や、実店舗とeコマースの両方を手がける小売業者に対して決定的な利点を保っています。世界的には、デジタルファーストの小売業者は実店舗&オンライン併用型の小売業者のアプリに比べて、ユーザーあたりの平均セッション数が1.5~3倍でした。ただし、その差は狭まっています。
多くの企業はモバイルを活用して顧客を実店舗に呼び込み、体験を強化しています。WalmartとTargetは2018年、モバイルアプリにストアマップを組み込んで、顧客体験を向上させるとともに店舗の効率を最適化しました。Lowe'sは拡張現実(AR)のトレンドに乗り、顧客がアプリを使って商品を自宅の空間に仮置きしたり、仮想現実(VR)の中でチェーンソーを試用したりできるようにしました。Nikeは自社アプリを刷新し、顧客がアプリ経由で商品を予約して店舗で受け取ったり、レジの列に並ぶことなく即座に会計したりできるようにしました。デジタルファーストの小売業者は依然としてモバイル経由でエンゲージメントを増やしていますが、実店舗の利点は対面で接客できることです。POSシステムを供給するRevelは、顧客が対面のショッピング体験を通じてブランドへのロイヤルティを強める可能性は、オンラインショッピングより5倍高いことを明らかにしました。これはおそらく、Amazonが実店舗の書店を複数オープンし、Whole Foodsを買収したことの主な要因でしょう。モバイルは、消費者を実店舗に呼び込み、来店中の体験を強化する点で極めて重要です。
2019年に成功するのは、オンラインと実店舗の両方で改革し収益を促進できる企業であり、モバイルはそうした成功を導く存在です。過去において実店舗とデジタルという2つの世界は遠く離れていましたが、モバイルはこの距離を狭めるチャネルなのです。
小売についてのより詳しい市場データとインサイトは、こちらの『モバイル市場年鑑 2019 〜小売編〜』でお読みいただけます。