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モバイル世界の秩序を再定義するZ世代

Lexi Sydow

Z世代の人たちは、スマートフォンの利用の仕方が他のユーザー属性のグループと異なっています。しかし、Z世代の利用習慣は、ビジネスや市場の形を変えてしまうほどの力を持っているのでしょうか。

スマートフォンがすでに普及している世界で生まれ育ったと想像してみてください。まだ小さい頃から、モバイルが人生の中で大きな役割を占め、デートや仕事や社会生活に使われることになるのです。

しかし、Z世代(16~24歳)の人たちがそんな想像をする必要はありません。彼らはまさに、そのような世界を生きているのです。複数の調査結果が示しているように、Z世代の96%がすでにスマートフォンを所有しています。彼らは、コミュニケーション、ショッピング、銀行取引、ニュースなど、生活のあらゆる場面でスマートフォンを活用しているのです。App Annieのモバイル市場年鑑 2019年』によれば、Z世代とそれより上の世代とでは、モバイルの活用方法やモバイルとの関わり方にはっきりとした違いがあります。

詳しく見てみましょう。App Annieがモバイル市場年鑑で報告しているように、Z世代は25歳以上の人たちと比べ、同世代で人気の高い非ゲーム系アプリの平均利用時間が長くなっています。具体的には、人気の高いアプリのエンゲージメントは20%高く、利用時間は30%長くなっているのです。つまり、Z世代を惹きつけるアプリは、この世代の中でより長い利用時間とより高いエンゲージメントを期待できることになります。しかしながら、アプリにおいて定着されたユーザーエクスペリエンスと堅固な価値提供の拡大に失敗するビジネスは、この世代を取り込むのは困難でしょう。ブランドロイヤルティーが断片化する時代には、モバイルでライフタイムカスタマーを獲得することが最も重要なのです。


Z世代とそれより上の世代とでは、モバイルの活用方法やモバイルとの関わり方にはっきりとした違いがある - その違いはビジネスの成功を大きく左右することになる


App Annieは、以前に公開したレポートで新興市場と成熟市場について取り上げ、市場が成熟しているほどエンゲージメントが高くなることをお伝えしました。つまり、Z世代は明らかに成熟したユーザー属性グループなのです。そうなった理由は、彼らが幼少期からモバイルに触れていることにあると思われます。彼らは一番気に入ったアプリを選ぶと、ほかのユーザー属性グループよりも長時間そのアプリを利用します。ただし、ゲームアプリでは正反対の傾向が見られます。Z世代より他の年齢グループのほうが、同世代で人気のゲームの利用時間が75%長く、エンゲージメントが50%多くなっています。

現時点では、このようなデータを意に介さない企業もあるでしょう。たしかに興味深いデータではあるものの、自社のビジネスに今すぐ影響する話ではないからです。しかし、これを見逃すことはリスクになり得ます。実際には、Z世代の利用習慣が、あらゆる業界の企業にとって非常に大きな意味合いをもたらしているのです。なぜなら、Z世代の人たちは、労働市場に参入するにつれて購買力を増しており、今後数年から十数年の間に世界市場でより大きな力を持つようになるからです。2020年には、すべての消費者の40%がZ世代で占められることになります。モバイルは、Z世代を惹きつけたいと考えている企業にとって重要なだけでなく、長期的な生き残りを図るすべての企業にとって欠かせないものなのです。

 


ブランドロイヤルティーが断片化する時代には、モバイルでライフタイムカスタマーを獲得することが最も重要


このユーザー属性の人たちをターゲットにすることは、すでに有効なビジネス戦略となっています。企業によっては、Z世代の支持を存立の基盤としているところもあります。その一例がTikTok(開発元はByteDanc)です。これはモバイル向けの短時間動画プラットフォームで、2018年に大きな人気を獲得しました。ByteDancは2018年、iOSとGoogle Playを合わせたダウンロード数で世界4位にランクインし、中国では1位を獲得しました。App Annieのデータによれば、米国では現在収益ランキングの25位に入っています。


モバイルは、Z世代を惹きつけたいと考えている企業にとって重要なだけでなく、長期的な生き残りを図るすべての企業にとって欠かせないもの


TikTokはもちろん、ニュースアプリやSnapchatにおいても、Z世代にとって欠かせないのが動画です。彼らにとって、動画は情報を消費する自然な手段なのです。ある調査によれば、Z世代の平均的なユーザーは1日に68本の動画を視聴しているそうです。これは、起きてから寝るまでの間に、1時間あたり4本以上の動画を見ている計算になります。また、Z世代の50%は、YouTubeが生活になくてはならないプラットフォームだと述べています。企業は、Z世代を惹きつけるためのモバイル戦略だけでなく、包括的な動画戦略を練る必要があるのです。

 

さらに企業は、Z世代の関わり方においてよりスマートな戦略を採用する必要があります。Z世代は、以前の世代と比べて、スマートフォンを上手に活用しています。彼らはスマートフォンの利用経験が長いため、ベビーブーム世代などと比べると、ネイティブ広告やインフルエンサーマーケティングが高い効果を発揮しません。Z世代は、本物とそうでないものを見分けることができるのです。


Z世代の平均的なユーザーは1日に68本の動画を視聴、起きてから寝るまでの間に1時間あたり4本以上の動画を見ている計算になる


実際、McKinseyは彼らを「True Gen」(真実の世代)と呼んでいます。彼らがしばしば、企業の真実の姿を突き止めようとするからです。「(Z世代の)およそ65%は、自分が買おうとする製品の素性、すなわち、その製品がどこで作られたか、何から作られたか、どのように作られたかを知ろうとします。彼らのおよそ80%は、不祥事に関わった企業の製品の購入を拒否します」と、McKinseyは2018年のレポートで述べています。

 

Z世代がますますその本領を発揮し、市場で存在感を高めるにつれて、誠実で、信頼でき、動画を使って効果的にエンゲージできる企業が好まれるようになるかもしれません。ただ、いずれにせよZ世代がモバイルファーストの企業を好むことは間違いありません。

2019 M04 2

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