データドリブンで顧客体験を重視した各サービスのアプリを展開する楽天、徹底的な消費者理解と顧客に向き合ったプロダクト開発
1年でアプリ市場の成長に大きく貢献をしたアプリパブリッシャー(アプリ提供企業)に対して贈られる賞「Top Publisher Award」。楽天株式会社は複数のアプリがランクインする結果となりました。その中でも、「楽天スーパーポイントスクリーン」、「楽天カード」、「楽天銀行」の3つのアプリの事業責任者の方々にアプリのグロースハックやデータ活用についてお話を伺いました。
ポイントを獲得する楽しさを叶える、楽天スーパーポイントスクリーンアプリ
2015年当初、楽天の新規事業として立ち上がった、楽天ポイントを獲得できるおこづかいアプリ「楽天スーパーポイントスクリーン」。2019年の躍進の背景となった施策やプロダクト開発、今後の展望を事業責任者の小林様(以下、敬称略)に伺いました。
――改めて、Top Publisher Award におけるエンターテイメントカテゴリでの9位入賞おめでとうございます。今回の受賞を振り返り、アプリの近況と成功の仮説要因はどういうところにあったのでしょうか?
小林:動画ストリーミングアプリなど非常に人気のあるアプリのなかでランキング入りできたことを非常に光栄に思います。ただ単に楽天ポイントがもらえるというアプリではなく、ポイント獲得体験を通してさまざまな楽しみを提供するUXにこだわってアプリを磨いてきた結果、非常に多くの皆様に使っていただけるようになり大変嬉しく思っております。
アプリ提供開始当初から、開発サイドとビジネスサイドで、アプリのコアバリュー(=「ユーザーにどんな価値を届けるのか」)について共通認識を持ち、UI の改善、マネタイズの仕組みの変革などに取り組み、ユーザー獲得を進めてきました。昨年は、アプリのコアバリューを改めて定義し、結果、DAU を成長させることができました。ポイントを取得したいモチベーションが高いユーザーの潜在ニーズ(ポイントを取れることが楽しい)へのユーザーの体験を考え、PDCA を回しました。プロモーションに関してもTVインフォマーシャルの活用や、インフルエンサーを活用しての継続的な訴求、楽天のスポーツイベントとのコラボなど様々な仕掛けを行ったことも結びつき、アプリの認知度が前年比約4倍にも増加しました。
――圧倒的にデータドリブンな組織ではあると思いますが、アプリ市場は世界・国内をはじめ、ますます競争が激化してきている中で、特に工夫されている点について教えてください。
小林:楽天スーパーポイントスクリーンに関して言えば、楽天ならではの大量の閲覧、購買データなどの消費行動分析データを活用することでレコメンドを行い、オンライン・オフラインを含めた様々な購買体験をポイントとともに提供できることにこだわっています。
――アプリ市場は変化が大きく、また、昨今の経済状況にも大きく左右され、国内外のあらゆる生活者行動変容やニーズ、余暇など時間の使い方が変化する中で、これらをどのように考え、捉えていますか?
小林:アプリを起点とするビジネスは多くのことがデータとして蓄積できます。そのため、日々データを観察しながら機動的に仮説を構築し、アプリを改善・運用していくことが非常に重要だと考えています。しかし、データをただ読み取るだけではなく、解釈して、体験に落とし込んでいくことがもっと大切だと感じています。データとユーザーの間にある理由や感性を読み解きながら新しい価値や体験を作っていきたいと日々考えてプロダクトの開発に励んでいます。
――App Annie を導入されてから、実際にアプリ市場データを用いてビジネスにどのような変化が起きたと考えますか?
小林:ランキング動向やリテンション指標などについて競合や優れたアプリと比較することでユーザーがどのようなスタイルでアプリを活用しているか線でつながってくるように感じています。これらを紐解きながらどのようなアプリであれば競争優位を作れるか考える材料として役立っています。
――モバイルビジネスの今後の展望や、目指していく姿を教えてください。
小林:楽天には70以上のサービスが存在しており、私達はその中で楽天ポイントを介した強力なタッチポイントになることが大きな目標です。まだまだ知られていないサービスや、楽天のサービスに紐づくマーチャント様の商品やサービスとの結びつきをデータに基づいて最適化・量産化しハッピーな体験を提供していくとともに、顧客を強力にエンパワーしていきたいと考えています。ここまで、ポイント獲得体験を軸にしてサービス提供をしていった結果多くのユーザーに支持される状況になってきましたが、「楽天エコシステム(経済圏)」の中ではまだまだ使われる白地が大きいと考えています。よりポイントxデータxAIを駆使するとともに、ユーザーが日々楽しいと感じる体験づくりにこだわってさらなるサービスの発展に向けて邁進していきたいです。
「日本一のクレジットカードサービス」を目指す楽天カードアプリ
会員数を年々好調に伸ばしている楽天のクレジットカード、「楽天カード」。アプリのユーザー数も順調に増加しさらなる躍進を続けています。2019年の躍進の背景となった施策やプロダクト開発、今後の展望を中野 泰夫様、和田 裕之様に伺いました。
――改めて、Top Publisher Award におけるファイナンスカテゴリでの4位入賞おめでとうございます。今回の受賞をり、アプリの近況と成功の仮説要因はどういうところにあったのでしょうか?
中野:楽天カードの発行が引き続き好調であり、昨年10月から始まったキャッシュレス消費者還元事業の影響もあり、カード発行とともにアプリ利用も増加しています。 カード発行と比例してアプリ利用も増加しているだけでなく、ウェブの会員サイトの楽天e-NAVIをご利用のお客様にもご利用のニーズにあわせてアプリをご紹介することでアプリをご利用いただけるようにしています。
――圧倒的にデータドリブンな組織という印象を受けましたが、アプリ市場は世界・国内をはじめ、ますます競争が激化してきている中で、特に工夫されている点について教えてください。
和田:以下の3点を心がけてサービス改善をしています。
・クレジットカードに求められる機能を利便性高くお使いいただける状態にすること
・ユーザー体験を損ねることが起きないようにする、起きたとしても迅速に修正する
・新たな技術トレンドは積極的に取り入れる
リアルでのクレジットカードによるユーザー体験は、現金のように財布に残額がいくらあるのか、というところが見えづらいため、何にお金を使うのか、支払い管理ができることが求められます。そのため、アプリを通して支払い残高を見える化し、支払い調整を簡単にできるようにしています。
ユーザー体験は、一般的なUX 理論をベースにNPS やユーザーが実際にどう感じたかを重視しています。実際にお客様の声(VOC)やデータで分析して評価が低い機能や体験については、ユーザーに寄り添って課題を解決するようにしています。
アプリは、Apple やGoogle が発表するアップデートに合わせて新しい技術トレンドを取り入れながら開発を進めています。最近だと、iOS アプリのダークモード対応を実装しています。
――アプリ市場は変化が大きく、また、昨今の経済状況にも大きく左右され、国内外のあらゆる生活者行動変容やニーズ、余暇など時間の使い方が変化する中で、これらをどのように考え、捉えていますか?
中野:かつては、キャッシュレスはお金をいくら使ったのかを管理できない不安や先入観が問題視されていた反面、昨今のコロナウイルスの影響で、現金授受の不安が多くなってきています。
非接触に関する取り組みとしては、
・楽天カード発行時に楽天Edyを付帯可能
・楽天ペイのお支払い元に設定可能
・Apple pay/Google pay 対応
・Master/VISAブランドの非接触券面の発行開始
があり、お客様によりご活用いただけるようご案内・サポートをしていきたいと考えています。
また、「お支払額調整」といったお支払いサポート関連のサービスも、アプリ内でより安心・便利にお使いいただけるようにサービス改善を行っていきたいです。
――App Annieデータを含め、貴社の事業におきまして「データ」をどのように、また何のためにご利用されているか、お聞かせください。
中野:他事業・他サービス、競合のアプリの状況を知りたいタイミングで使っています。また、自社サービスを設計する際に、ニーズがどれくらいあるのか、その規模はどれくらいあるのか、方向性があっているのか、といった答え合わせを行っています。
――モバイルビジネスの今後の展望や、目指していく姿を教えてください。
中野:アプリは最も成長している弊社プロダクトのため、お客様のニーズをすべてアプリで満たせるようにしたいと考えています。また、アプリ利用拡大のスピードにサービス企画・開発のスピードを追いつかせることができるよう、ユーザーの希望するニーズにタイミングよく応えていきたいです。
アプリ起点のインターネットバンキング 楽天銀行アプリ
近年のインターネットバンキングの普及もあり、順調に口座数を伸ばす「楽天銀行」。消費者のスマホへのチャネル移行をスムーズに取り入れ、アプリの展開に着手しました。2020年4月に約6年ぶりのアプリ刷新を行い、「お客様の体験を高めるためのサービス設計、パーソナライズできるUI 改善を実施。口座数、預金残高ともに成長を続ける楽天銀行のアプリについて、執行役員・編成本部本部長 三澤 達也様、編成本部 副部長の成田 裕明様にお話を伺いました。
――改めて、Top Publisher Award におけるファイナンスカテゴリでの9位入賞おめでとうございます。今回の受賞を振り返り、アプリの近況と成功の仮説要因はどういうところにあったのでしょうか?
三澤:アクティブユーザー数やユーザー獲得(アプリ、ウェブ経由両方)をマーケティングチームと協力しながら行い、ユーザーのレビューに愚直に向き合った結果、他行の銀行アプリが存在する中でも多くのお客様にご利用いただけていることに関して、大変嬉しく思います。
楽天グループサービスとの連携を強化し利便性を高めることで、口座数を大きく伸ばすことができ、結果アプリのユーザーも増やすことができました(2020年6月に国内のインターネット銀行で初めて900万口座を突破、また、2020年6月末に預金が4兆円を突破)。
主なグループ連携としては、SPU(口座保有者が楽天カードの引き落とし口座を楽天銀行にすると、楽天市場での購入時のポイント+1倍)や、楽天ペイへの口座からのチャージ機能(楽天キャッシュのチャージ)、楽天証券口座と銀行口座間の自動入出金機能、楽天カード引き落とし口座設定や楽天証券との口座連携による金利優遇等があげられます。
――ファイナンスカテゴリのアプリには、バンキングアプリのみならず、決済アプリなどのフィンテックアプリや貴社のような店舗を持たないチャレンジャーバンクといったサービサーの顔ぶれが増えていきていますが、市場の変化をどのように捉え、自社の戦略や製品戦略など、全般的に特に工夫されている点につきまして、お聞かせください。
三澤:インターネットバンキングの主戦場がスマホシフトしている点を踏まえ、かねてよりアプリのUI・UX改善に注力してきました(ディスクロージャー誌内 永井社長コメントより)。
――UI・UX の改善で具体的にどのようなことを行って改善プロセスを回していますか?
三澤:利用デバイスやチャネルが変わってきたことに迅速に対応しています。
近年では、スマホがさらに消費者のメインチャネルになったこともあり、すべてのサービスを1アプリに集約することで、他行にない利便性を提供できていると思います。また、コンタクトセンターへのお客様の声(VOC)やアプリの全レビューをベースに改善点を洗い出し、一つ一つ改善策を実行し、改善策を実行後は、VOCやレビューの変化を確認するとともに、改善策を実施した機能やサービスの遷移率やコンバージョン率などの数値の変化も検証を行うという地道な活動を繰り返すことで、UI・UXの改善に取り組んでおります。
スピードを意識できるのは、開発を内製できることで、企画から開発までの効率を上げることができているからだと考えています。
――アプリ市場は変化が大きく、また、昨今の経済状況にも大きく左右され、国内外のあらゆる生活者行動変容やニーズ、余暇など時間の使い方が変化する中で、これらをどのように考え、捉えていますか?
三澤:キャッシュレス・ポイント還元事業の開始やコロナウイルスの影響でお客様の年齢層やモバイルリテラシーの幅が広がっています。多様化するニーズにお応えできるよう新たなサービスとして、ワリカン機能やコンビニ払込票のアプリ支払機能等のローンチや、楽天グループの金融サービスとの連携による利便性の向上、地銀連携による利用チャネルの拡張、ユーザビリティ・アクセシビリティの改善を進めています。
――App Annieデータを含め、貴社の事業におきまして「データ」をどのように、また何のためにご利用されているか、お聞かせください。
成田:主にアプリストアのレーティングの推移の確認や、レビューコメントの集計・分析に活用しています。
レビューコメントは、頻繁にモニタリングしており、アップデート後のユーザーの反応や不具合、ユーザービリティ上の問題に関する書き込みがあった場合は、関係者に連携し、必要に応じて対応をしています。また、競合の状況把握として、MAUやストア情報のモニタリングも行っています。
――モバイルビジネスの今後の展望や、目指していく姿を教えてください。
三澤:「安心・安全で最も便利な銀行」を目指していきたいと考えています。会社の信頼性・知名度、グループ全体の信用などの安心とセキュリティ面での安全性を高める、さらに、便利さを付随させ、お客様の生活に即したサービスの提供を行っていきたいです。
App Annie は、あらゆる業界で日々表面化している消費者行動の変化についてデータからのインサイトを提供し、貴社のモバイルビジネスの改善をご支援します。こちらからご相談ください。
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2020 M08 26
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